
パンの実が落ちて、腐り掛けていた、何とか食べられないかと割ってみると白い小さな蛆がわいていた、これならヒナタンと余り変わりはない。ヒナタンとは、サゴ椰子の倒木や澱粉を取った粕の腐った中にわくカブト虫の様な昆虫の幼虫で、土人も生で食う脂肪とタンパク質の多い、内地でも喜んで食べる蜂の子の様なものである。
ヒナタンに比べれば比較にならぬ程小さく便所にわく蛆の四分の一位の大きさで、食べではないが蛋白源としては見捨てられないものである。蛆のように動くので余り気持ちの良いものではないが腹の虫と喉から出る黒い手の命令で、一つ二つとつまむうちにパンの実にウジョウジョわいていた蛆を残らず平らげた、一つ残らずと言っても一匹の量が余りに小さいから、腹の足しにもならない位であるが、野菜を飯盒一杯食うより栄養はある筈である。 |