We-net | 表紙 | | 目次 | あとがき





魂は何処へ行く
再度の応召
美しき富士
  
上陸
製塩隊
  薪取り
  汐汲み
  塩炊き
月の海邊
月夜蟹
パンの実
椰子の葉
ミサツプ岬
終戦
  ムッシュ島の日々

野戦病院へのあこがれ
野戦病院
人を呪わば穴二つ
  腹の虫
  灰色のダイヤ
  生き霊
  悔恨
発言(はつごん) お題目
在るやなしや
トカゲ
ヒルの味
環境と教育

天皇陛下
労働組合の社会的責任は何か
晩年、入院中の歌
 
父の遺稿集について
 
附録




ミサツプ岬



 エメラルドの様に澄んだ碧い海と、透き通る様な大気に浮かぶ綿雲の白さが南国特有のコントラストの面白さを作り灼熱の太陽から私達を守り安息の場所を作って呉れる椰子の林が緑の幕を長く引き連ね風にゆらいでいた様子がつい二三日前の様に思い出されるのに、ここ二ヶ月許り連日連夜の爆撃で、今は無慙に緑の葉を剥ぎ取られ、先の摺り減った竹箒(たかぼうき)を逆さに立て並べた様に何千何万本と云う椰子の林が赤茶けた残骸を一面に拡げている。
 大方の兵隊は四五粁離れた森林地帯に移動し海岸線を守る監視哨の兵隊が未だ点々と二三本づつ残っている椰子の木陰に天幕を張ったり、掘立小屋(椰子の葉で屋根を葺いた)を立てて、そこここに三四名づつ残っていた。






Copyright (C) 1981,1993, 2003 小野信輝, 小野和輝