
「人間は何にでもなれる。悪魔だって、盗人だって、小鳥にだって、蝶々だって、何にだって」
「どうして」
「考えてごらんよ。例えば、昨夕(ゆうべ)悪魔の夢を見たとする。自分が悪魔になっている。初めは自分がやっている悪魔の所業に疑問を持ち、はて、自分は本当に悪魔なんだろうか、夢でないんだろうか、と。人間の心が働くが、その中に、自分が悪魔であることに疑念がなくなり、悪魔になり切っていた事を、ふとさめた夢の中の自分の悪魔の心にびっくりする事がある」
「そうね、何だって、あんな夢を見たのだろう。人間なんてひょんな事で、人殺しをしないとは限らないね」
「そうでしょう。そんな立場に置かれたら、私だって人殺しをするかも知れない。否、殺してしまっていたかも知れない、そんな事を思うとぞっとする」
「本当にね、氏より育ちというものね」
「環境が大事なんだ。人間は教育によって本当に変わってしまうものだ」 |