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魂は何処へ行く
再度の応召
美しき富士
  
上陸
製塩隊
  薪取り
  汐汲み
  塩炊き
月の海邊
月夜蟹
パンの実
椰子の葉
ミサツプ岬
終戦
  ムッシュ島の日々

野戦病院へのあこがれ
野戦病院
人を呪わば穴二つ
  腹の虫
  灰色のダイヤ
  生き霊
  悔恨
発言(はつごん) お題目
在るやなしや
トカゲ
ヒルの味
環境と教育

天皇陛下
労働組合の社会的責任は何か
晩年、入院中の歌
 
父の遺稿集について
 
附録




附録



 太田国民学校 各生徒の作文

尋常三年 小野信輝

 二年生のおしまひ頃のある日、

 二時間目のをはりに「小野さんおうちからおむかひが来ました。早くおかへりなさい」と先生がおっしゃいました。僕は「何だらう、弟がわるいのかなあ」としんぱいしながらおにもつをしまつて家へ急ぎました。門のところまで行きますと車屋が「早くはやく」とよんでゐました。むちゅうでざしきに行って見ますと、ばあやにだっこした弟はくるしさうに、もう目もあきませんでした。
 おとうさんとむとうおいしゃさんは、何だか首をひねつてひそひそお話ししていらっしゃいました。僕は十郎のかほを見たゞけで何ともいふことが出来ませんでした。どうか直すことは出来ないだらうかと、おとうさんのかほを見てゐましたが、おとうさんもたゞだまつて十郎のかほを見てゐるばかりでした。だんだん苦しさうになつて、十郎はおとうさんやおかあさんのそばでとうとう死んでしまひました。
 一番おとなしかつた、そしてかはいらしかつた十郎、いつでも僕のあとをおつてどこへでもついてくるのでしたが、もうなんにもわからなくなつてしまひました。





  評 かはいそうにも十郎さんの苦しむやうすが、ありあり目にうかぶやうです。私もこんなことがあつたので、この文をよんでかなしくなりました。






Copyright (C) 1981,1993, 2003 小野信輝, 小野和輝