
太田国民学校 各生徒の作文
弟尋常三年 小野信輝 二年生のおしまひ頃のある日、
二時間目のをはりに「小野さんおうちからおむかひが来ました。早くおかへりなさい」と先生がおっしゃいました。僕は「何だらう、弟がわるいのかなあ」としんぱいしながらおにもつをしまつて家へ急ぎました。門のところまで行きますと車屋が「早くはやく」とよんでゐました。むちゅうでざしきに行って見ますと、ばあやにだっこした弟はくるしさうに、もう目もあきませんでした。
おとうさんとむとうおいしゃさんは、何だか首をひねつてひそひそお話ししていらっしゃいました。僕は十郎のかほを見たゞけで何ともいふことが出来ませんでした。どうか直すことは出来ないだらうかと、おとうさんのかほを見てゐましたが、おとうさんもたゞだまつて十郎のかほを見てゐるばかりでした。だんだん苦しさうになつて、十郎はおとうさんやおかあさんのそばでとうとう死んでしまひました。
一番おとなしかつた、そしてかはいらしかつた十郎、いつでも僕のあとをおつてどこへでもついてくるのでしたが、もうなんにもわからなくなつてしまひました。
評 かはいそうにも十郎さんの苦しむやうすが、ありあり目にうかぶやうです。私もこんなことがあつたので、この文をよんでかなしくなりました。 |